医療コラム 自律神経の鍛え方 2022.09.26 血管と神経は体中に張り巡らされて、前者は体内のあらゆる臓器に酸素や栄養素を供給していますが、後者はそれらの機能を調節しています。中でも、自律神経は心臓、血管、胃腸の動きを制御しています。人前に立って大勢の前で話をしたり、激しい運動をすると心臓がドキドキしたり血圧が上がって顔面が紅潮するような経験をされた方は多いと思います。 逆に安静にして眠っている時には自然に脈も遅くなり血圧も下がります。これがすべて自律神経の働きによって営まれています。自律神経には興奮状態を作り出す交感神経と体の安らぎを促す副交感神経があり、その両方がバランス良く作動することで体調を制御しています。夜遅くなると副交感神経が優位となり、自然に血圧が下がり脈もゆっくりとなって体は寝る準備にかかっているのに、遅くまで仕事をしたり、テレビを見たりしていると身体は興奮状態となり心拍数や血圧は上ります。 そのような生活を毎日続けていると、高血圧症、不眠症といった病気が発症してしまうことは明白でしょう。例えば、全速力で何時間も走っている車のエンジンが休まずに走り続けるとヒートアップして止まってしまうのと似ています。 自律神経は神経の中でも手足や首を動かす神経(随意神経)に対して付けられた名称で、その名の通り自立して勝手に動く神経とされていて、それを鍛えることはできないと解釈されていました。しかし、自律神経もその程度の差はあれ鍛えることは可能です。まず簡単な例を示しながらお話ししますと、人前で話すときにドキドキして思うように話せず、手に冷や汗が出たりすることを経験された人が多いかと思います。ところがそのような行為に慣れてくると興奮しなくなり多少のことでは血圧や脈拍も上がりません。 これを医学的には交感神経の閾値が上がったといいます。サウナに入ると汗が出て気持ち良いと思えるようになるのには数か月かかります。なぜなら慣れないうちは体がサウナの暑さで交感神経が刺激され皮膚の汗腺を閉じて熱を体内に入れないように反応します。その為になかなか汗が出ません。ところが何度もサウナに入っていると身体が慣れてきて汗腺が閉まらなくなり、汗が出て爽快感が生じます。交感神経の刺激で副交感神経が連動して刺激され、汗腺を広げた結果という事です。すなわち副交感神経の閾値が上がったからです。 「人は年を取ると涙もろくなる」といいますが、それは多くの人は日常の生活で若い頃のような仕事のストレスや様々な刺激が少なくなるので交感神経優位からスローライフの生活で副交感神経の閾値も下がってくる為です。映画や音楽鑑賞で感激的なシーンに出会うと若いころは涙もほとんどでなったのが、高齢になると涙もろくなってきます。これは副交感神経の閾値が低くなり感情の琴線に触れて涙腺が開き易くなるからです。 このような例からもお分かりかと思いますが、身体を異なった環境に徐々に慣らすことで自律神経の閾値(感受性)を上げたり、下げたりすることが可能になります。 最後に自律神経の鍛え方をお教えします。散歩やウオーキングといった身近な運動から始めてみてはいかがでしょうか?体を動かすことで交感神経が刺激され脈拍が上がり血流も良くなります。毎朝30~40分のウオーキングで脈拍数を安静時より30%ほど上げることで交感神経が刺激され、それに連動して副交感神経も鍛えられます。はじめの内は身体が辛いと思う気持ちも乗り越えられ、次第に我慢強い身体が作られていきます。 【自律神経を支配する者は健康で心豊かな人生を得る!】 Tweet Share RSS 南和友クリニックの治療方針について